alfortface’s diary

プリキュアシリーズの話をします。

ヒープリに「生存競争」の要素はあったのか?

「ヒープリは生存競争だった。ゆえに人間もビョーゲンズもどっちもどっちである」という旨の主張を熱心にされている人がおられます。ツイッターで「ヒープリ 生存競争」あたりで単語検索すると引っかかるはずです。

 

筆者としても興味がある話題なのですが、取り扱っている単語に専門性があること、ツイッター上の短文のやり取りでは成立が難しいことなどを踏まえて、実際に関連する単語を調べながら記事にしました。

 

▼生存競争とは


個体が次の世代を残すためによりよく環境に適応しようとし、生物どうし、特に同種の個体間で競争すること。
社会生活の中でみられる食わんがための競争。「―の厳しい業界」

 

【意味】生物が生きていこうとするために、おたがいに起こす競争。

【語源・由来】「生存」は、生物が生きること。生き残ること。「競争」は、有利な状態になろうとして、ほかをおしのけてあらそうこと。

 

 

上記の内容から「優位に立ちたい者同士が互いに争い合うこと」と伺えます。競争という言葉がある時点でこの認識に大きなズレはないはず。

 

次に、作中で語られたビョーゲンズ事情をおさらいします。

 

  • ヒーリングアニマルが住む秘密の世界(ヒーリングガーデン)が突然ビョーゲンズに襲われた

前触れもなくいきなり襲われてます。

 

  • 激しい戦いの末、双方のトップが相打ちになってかなりのダメージを受けた

第一話の時点でテラビョーゲンが普通に活動できていたので、おそらくキングビョーゲンのみダメージが大きくて撤退というところでしょうか。

 

  • 次に、地球を自分達のものにするため人間界を蝕みに来た

ヒーリングガーデンほどの戦力を持たない人間界から蝕んで勢力拡大とキングの回復を狙い、最終的にヒーリングガーデンを含めた地球全体を自分のものにするという思想ですね。戦略的だと思います。

 

  • 自分達の住み心地の良い世界にするために地球を病気にしようとしている。そうなるとビョーゲンズ以外の命は死ぬ

プリキュアシリーズの作中で本当に「死ぬ」という言葉を使うのは珍しい。地球を蝕む行為というのは、それくらいのレベルって話ですね。「住環境を得るため」じゃなくて「住み心地良くするため」というのもポイントが高い。

 


ここまでの情報をまとめると、ビョーゲンズのやってることは“侵略”に該当します。

 

▼侵略とは


自衛措置のような正当な理由もなしに、武力攻撃によって他国領土を剥奪すること。

 

 

ビョーゲンズの行為そのまんまです。

自衛の要素はなく、宣戦布告の手続きもなく、いきなり非交戦状態の領土に武力攻撃を仕掛けているので競争とも戦争とも言えません。

現実社会の国家間や組織間で発生する争いではなく、ファンタジー世界の山賊が村人を始末して村と食料を略奪するような関係性と言えます。


「なぜ地球外の侵略者に対して人間社会の話を…?」と思う方も多くいらっしゃると思いますが、それを言ってしまうと生存競争の話も消えてしまうためどうかご了承ください。


そこにプリキュアが現れる…というのが第一話のことですね。

目の前の不当に苦しめられているものを助けるために立ち上がり、大いなる力を得てプリキュアシリーズに限らずバトルヒーロー、ヒロインものの定番。

ここからはその他プリキュアシリーズ、ならびに様々な同系統の作品と同じように日常を過ごす中で唐突に敵組織の侵略行為が始まり、それにプリキュアが対抗するというスタイルで話が続いていきます。

 


そして、ここで再確認です。

侵略者がやってきて、放っておけば地球は奪われ蝕まれ、そうなれば地球上の命は死ぬ。

 

侵略行為に対して抵抗することは「生存競争」なのか?

 

という話になってきます。

 

実はこの侵略に関わる問題、現実社会においても確実に定義しきれるものではないそうです。
現実社会では国連憲章が~とかいろいろ複雑な前提があるのですが、少なくとも某国の某行為を即座に侵略行為と認める…といったことはできません。ここまでやったらアウトみたいなラインが明確ではないんです。

明確化してしまったらそれはそれで「ここまでは侵略じゃないよね?」と言って悪用する組織が出てくるのも容易に想像できます。

極力ミスなく、かつ柔軟な対応をするためにはどうしても迅速な決断ばかりとはいかないわけです。

 


すみません、話題が脱線しました。

 

いやいや、話題が逸れるのも仕方ない…と言い訳をさせてください。

女児向けアニメに登場する、話を聞く気のない地球外侵略者に対して「生存競争か否か」を問うという異色の前提で話を進めているわけですから、脱線するしない以前にこの話題はヒープリ本編の線路上にはありません。

 

 

話を戻して、生存競争なのかどうか…ということですが。

 

答えは「言葉の正しい意味とは合っていないが、そう主張する人もいる」です。

当然と言えば当然なんですが、これ以外の答えを出すのは難しい。


ひとつ例え話を挙げると、空き巣被害に遭って家を荒らされて金品を奪われた人に対して「お前の防犯意識が低いのが悪い、空き巣した人にもそうせざるを得ない事情があったのかもしれない」と言ってしまう人も存在するので。

 


しかし、ヒープリ“だけ”を生存競争として扱うのなら話は別です。

 

 

少し前に同じようなことを書きましたが、ヒープリは「強大なパワーを持つ侵略者に対して、後天的に得た超常的なパワーで対抗する」という王道のスタンスで話が進みます。

つまりヒープリの戦いを生存競争としてしまうと、その定義はヒープリに留まらなくなります。

プリキュアも、仮面ライダーも、ウルトラマンも、当然他のヒーローヒロイン達も、ほぼすべての戦いを生存競争として扱わなければ成立しません。


ヒーリングガーデン含む地球側は侵略行為がなければビョーゲンズを攻撃しないけど、ビョーゲンズ側は任意のタイミングで地球への侵略行為を繰り返す。

毎話この展開が続いているのを見ていてなお生存競争と主張するのであれば、それはおそらく生存競争という言葉本来の意味をさほど重視せずに使用していることが伺えます。

「全体ではなく部分的にここが生存競争なのだ」という可能性もあるのですが“部分的な生存競争”ってもういよいよゴチャゴチャしすぎて理解を得られなさそうなのでこれ以上は掘り下げません。

 


襲われた→抵抗した→生存競争 …というのは些か乱暴な主張だと思いますが、そういう風に見る人がいること自体は否定しません。

現に力強く主張する人がいたからこそ、言葉の意味をちゃんと調べてみようと思ってこの記事に着手したので。

 

言葉の誤用自体は誰でも経験していることだと思いますが、主張として他者に届ける意図があるならなるべく避けたいですね。

普段あまり縁のない言葉を使う際には、ちゃんと本来の意味や背景を調べて一般的な認識とのズレがないかどうかを確認してから使うように改めて気を付けたいと思いました。

 

 

以上です。

この記事を書くために、短い時間ながら言葉の正しい意味や現実社会に則した背景をいろいろ調べました。

自分一人ではこういうことを調べようとは思わなかったはずです。

思わぬ形で知識を増やす機会が得られました、やってみるものですね。

 

 

それでは。